2020年、小学校の英語が教科化するんです!
・・・と言うと、「今でも小学校で英語を習っているわよ」という保護者の方の声が聞こえてきそうです。
しかし現在(2017年の執筆記事です)行われているのは、教科としての英語ではなく「必修」とされている外国語活動の一環です。
2020年には、英語の授業が大きく変わります。何がどう変わり、子どもたちにどのような効果をもたらすのか、そのあたりについてお話をしていきたいと思います。
目次;
1.小学校での英語の「教科化」と「必修化」
日本の小学校においては、2008年に5・6年生を対象に外国語活動としての英語教育が始まりました。
移行期間を経て2011年には、5年生から英語が「必修」となり、それ以降は週1時間の英語の授業が現在も展開されてきています。
授業内容としては、英語に親しみを持てることを目標に、「聞く」「話す」が中心になっています。
そして2020年には「教科」化されるわけですが、それでは、「必修」と「教科化」の違いは、いったい何なのでしょうか。
これは、端的に言えば、成績がつくかどうか、ということになります。
英語が教科化されると、「必修」の間にはなかった文科省検定を通った教科書を使用し、さらには今まではつけられなかった成績がつけられるようになります。
ちなみに2020年度には、小学校の3・4年生で、英語が「必修化」されることになっています。
まとめると、2020年には以下のようになります。
①小学校5・6年生で教科書を使用し、成績もつける「教科化」が行われる
②小学校3・4年生では、英語に親しみを持つための授業が「必修化」される
2.小学校ではどのように英語の成績をつけるの?
教科化される=成績をつける、ということは、子供たちの英語に何らかの採点を行い、テストも実施されるようになるということです。
いまのところ、英語のテスト内容が、どのようなものになるかについては、明確な指針というようなものがありません。
「聞く」のテストであれは、中学などでも行われるリスニングテストと同じ要領ですので、実施がしやすいでしょう
「話す」「読む」に関しても、中学校で実施されている手法を取り入れれば、ある程度は問題なく実施ができるでしょう。
注目すべきは、「書く」が入ってくるかどうかです。
「テスト」となると、日本人はすぐに「書く」を連想してしまいます。
もちろん成績をつけるとなると、それが一番評価しやすいわけですが、そもそも英語教科化の目標として、【グローバル化に対応した英語教育改革実施計画】(文部科学省資料より抜粋)には、
「英語によるコミュニケーション能力を確実に養う」
「東京オリンピック・パラリンピックに向け、児童生徒の英語による日本文化の発信、国際交流・ボランティア活動等の取組を強化」
とあります。それを考えると、成績をつけやすいという理由で「書く」テストを中心に行うことはナンセンスだと、わたしは考えます。
もっとも、小学生レベルの単語の意味を書きとったりする程度であれば、子どもの興味付けや、英語に対する自信獲得の意味で、効果を発揮するでしょうから、書くテストを完全に排除すべき、と言っているわけではありません。
3.英語の教科化と「モジュール授業」
教科化されることで、文部科学省が挙げているモデル時間割は週3コマ程度+モジュール授業です。必修のときは週1コマですので、3倍以上の分量ということになります。
ちなみに、モジュール授業とは、たとえば45分の1コマ分の授業を15分に3分割してジュール(構成要素)に分け、それが連続でなくとも3つ集まって1コマ45分の授業とカウントするものです。
なんだかややこしいですね。
モジュール授業を行うことについては、以下のような理由があるようです。
まず、英語という新しい教科が時間割に組み込まれますから、子どもの学校での授業時間は絶対的に増えます。
その際、単純に1コマ分を「7時間目」などとしてしまうと、学校側・そして子供たちにも負担が大きくなり過ぎます。
そこで、小分けにして朝の時間や給食後に組み込むことで、英語に触れる回数を増やし、反復により習得される活動にあてることで、授業時間も確保し、かつ効果を得られるようにするために、モジュール授業という時間割を想定しているようです。
4.教科化による効果のカギは指導者の確保?!
小学校での英語の授業は、学級担任に加えて専科教員を活用するとしています。
この教科教員の確保が急務となっており、不足しているのが現状です。
そのため、既存の先生の指導力育成のための研修の仕組みなども不可欠でしょう。
そして何よりも重要なのが、子どもたちの英語能力向上に関しては、この教科化というのはどのように効果を発揮するものなのか、ということです。
教科化により授業数が増える=英語に触れる機会が増える。
そういう意味でいうと、英会話や、リスニングが自然に多く与えられ一定の効果はありそうです。
ただ、小学校でコミュニケーション能力の素地を養ったのちには、中学・高校へと、学びを継続していかなければいけません。
文部科学省も「小中高を通じて一貫した学習到達目標を設定」すると明言していますので、長期的にかつ、連携がとれた仕組みになれば、英語力向上に期待ができるでしょう。
ただし、「成績がつけられる」ということで、従来型の机上での取り組みに寄ってしまうと、必修化以前と同様、日本人が英語を使えるようになることは難しいでしょう。
つまり、授業を行う先生の力量や、国の支援態勢により、どちらにも転ぶ可能性を秘めています。
5.まとめ
2020年の教科化はすぐそこに迫っていますが、英語力向上の環境を作るために国が動き始めました。
その環境を生かすか否かは、最後は学習者に委ねられます。
ただ、子どもたちは興味関心も様々ですし、意欲にも差があります。
だからこそ見守る大人が、しっかり子どもに目を向けて、できる限りの支援をしていくことが大事なことではないでしょうか。
子どもたちの可能性を広げるのは、近くにいる大人の責任でもありますね。