前回は「小学校の英語教科化を考える」というタイトルで、2020年から始まる英語の正式教科化についてお話をしました。
今回は、それでは海外の小学校ではどのような外国語教育が行われているのか、という点に着目して、イギリス・イタリア・フランス・タイ・マレーシア・オーストラリアでの教育事情についてお伝えいたします。
目次;
1.イギリスの小学校での外国語教育
2.イタリアの小学校での外国語教育
3.フランスの小学校での外国語教育
4.タイの小学校での外国語教育
5.マレーシアの小学校での外国語教育
6.オーストラリアの小学校での外国語教育
7.まとめ
1.イギリスの小学校での外国語教育
イギリスでは7歳から11歳までの子供たちに向けて外国語の授業が必修化となりました。
参考URL → Foreign languages to be compulsory from age seven
一番多く取り入れている外国語の授業は、フランス語になります。
次いでスペイン語やドイツ語になりますが、最近では中国語にも力を入れ始め、BBCの国営放送でも中国語の学習番組が放送され始めています。
参考URL → New BBC show offers Mandarin for pre-schoolers
イギリスの子供たちは、TVを見て外国語を学ぶ子供たちも多いのですね。
でも、英語は世界の公用語。その公用語として話すイギリスの子供たちにとっては、やはり英語以外の外国語学習を取り入れて話せるようになるには壁も厚いようです。
イギリスでは英語が母国語のため、移民が多い国ではありながらも英語を話せることは必須になります。英語の読み書きができないと生活をすることも難しいですが、逆にいうと、イギリスでは英語を話せれば生きていけます。
外国語を学ぶ必要性が特になくなれば、話すことがなかなか出来なくなる。これは、日本人が英語が不得意な理由にも共通するのかもしれませんね。
2.イタリアの小学校での外国語教育
イタリアの母国語は、イタリア語です。
ヨーロッパに位置するイタリアでは、小学校1年生から英語教育がはじまります。
英語の教科は必修科目となっているため、小学校1年生では週に1時間、2年生では週に2時間、3年生から5年生では週に3時間の英語の授業を実施しています。
もっとも、イタリアでは英語を話す教師の質があまり良くない、と言われていて、その点を改善すべきだという議論がよく出てきます。
イタリアにはもう一つ問題を抱えています。
イタリアは移民の多い国でもあり、その移民たちがイタリア語を話せない、ということです。
そのために外国語の英語よりもイタリア語の教育に力を入れている、という地域もあるようです。
このように、イタリアでも英語を話せない、あるいは苦手、という人は多いです。ただ、わたしがイタリアに滞在していたときには、教育に携わっている方や若い方は英語を話せる人が多かった、という印象です。
イタリア語と日本語で会話が成り立ってしまった、という不思議な経験もありました。
最終的には、言葉は「心で」話し合える、ということを実感しました。
3.フランスの小学校での外国語教育
フランスの母国語はフランス語です。
フランスでも、イタリア同様、小学校1年生から英語教育がはじまります。
しかり、やはりフランスでも英語講師の質はイマイチで、政府としては英語教育に力を入れているものの、英語を苦にして話さない、というフランス人は多いです。
プライドが高くて英語を話したくない、というわけではなく、単に苦手だという人も多いようです。
ちなみにフランスは移民の多い国でもありますが、植民地としてフランス語を話す教育を受けてきた移民が多いため、移民であっても、フランス語を話すには割とスムーズです。
以前出会ったフランス人のご夫妻は、辞書を片手に英語を一生懸命話そうとしてくださいました。
笑わないイメージのあるフランス人でしたが、実際に接してみて話をしてみたら、とても気さくな方が多かった印象を受けましたよ!
4.タイの小学校での外国語教育
タイの母国語は、タイ語です。
タイでも、やはり小学校1年生から英語教育がはじまります。さらに、一部の幼稚園では、英語のアルファベットを教えたり、英語学習プログラムを組んでいるところもあります。
タイでも、基本的にはタイ人の教師が英語指導を担当しますので、タイなまりの英語で話すことも多いのですが、ネイティブスピーカーの教師の導入も少しずつ進んできています。45分授業で筆記と文法中心の英語授業が週に3-4回あります。
ただし、タイでは英語を学んだからと言って、話せるようになるか?という点では、まだまだ課題のようです。この辺りの課題は、日本とも共通していますね。
また、タイでは近年、中学校で中国語や日本語の授業も選べるようになりました。
5.マレーシアの小学校での外国語教育
マレーシアの母国語はマレー語です。
もっとも、マレーシアは多国籍民族の国ですので、インド系や中国系、マレー系などの自国語を持つ人たちが集まっている国です。多くの人たちが、マレー語以外に話せる言語を持っています。
マレーシアでは小学校1年生から英語教育がはじまります。
ですが、さすがは多民族の国、小学校よりも前、幼稚園のころから英語のプログラムを組むように、という政府の方針も出来ています。
今まで挙げてきた国々に比べ、英語教育が徹底している国と言えるでしょう。
ただし、マレーシアでも英語を学んだからと言って、話せるようになるか?という点では、まだまだ課題もあるようです。
6.オーストラリアの小学校での外国語教育
最後に紹介するのは、また英語圏の国に戻ってオーストラリアの外国語教育事情です。
オーストラリアも、やはり移民が多い多国籍の国です。
そのため、外国語教育へは国を挙げて力を入れています。
小学校低学年から外国語を教え始めますが、フランス語、イタリア語、インドネシア語や日本語、中国語などその学校によって異なるという特徴があります。
バランスよく、読む・書く・聞く・話すの4技能を取り入れた授業を行っています。
オンライン学習やスカイプなどの多用をして、子供たちが興味を持って学習ができるような工夫が良くされている学習法を取り入れています。
もう一つ、オーストラリアの外国語教育で特徴的な点は、政府が制定する教科書がない、ということです。
それぞれに、自作の教科書を作成したり教師が独自に選んだ教科書を使って学ぶことができるので、わたしはとても素晴らしいことだと思います。
実は、わたしはオーストラリアで日本語を指導していた経験があります。
まず、日本語で作成した教科書を自作で作成し、独自のプログラムも作成します。
例えば50音を使ったかるたを作って、子供たちにゲーム感覚でひらがな・カタカナを導入したり、ピアノを使って日本語の歌を歌ったり、踊ったりすることを取り入れて、とにかく楽しく学習できるように工夫をしました。
ひらがなを黒板に書いて、自分の名前であいさつをすることは毎回行いました。
「わたしの名前は○○です」といったあいさつを生徒一人一人に行ってもらうのです。
子供の場合は、15分を過ぎると集中力が低下しやすいため、15分おきにプログラムを替えて教えていましたが、生徒たちの興味も持続し、効率もよかったと感じましたよ。
7.まとめ
日本だけでなく、外国語教育については諸外国でも大変な努力と苦労があるようですね。
どの国でもネイティブスピーカーの教師の育成というのが、今後の課題となっているように感じます。
今までご紹介した国のなかでは、オーストラリアでの外国語学習がひとつの見本となっているのではないでしょうか。効率よく、かしこまらずに自由な発想で、工夫がされているように感じました。
日本の英語教科化をする上でも、参考にしてほしいなあと思っています。
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投稿日: Nov 22, 2017 | 閲覧数: 618 | カテゴリー:
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日本人が英語に触れる機会は年々増えてきています。
世界はグローバル化が進み、子供たちにとっても、英語学習が非常に重要になってきました。
一部の小学校では英語の授業が本格的に取り入れられ始めていますし、ネイティブの英語教師による授業を始めている小学校もどんどんと多くなってきています。
小学校からの英語教科化が2020年から本格的に実施されることが決まりました。
英語が正式な「教科」になることによって、どんな影響や効果があるのでしょうか?
海外に長期間滞在してきたイチ日本人の立場から、英語の教科化について考えてみました。
目次;
1.小学生の身近にはすでに英語がある?!
2.小学生が英語を学ぶときのキーワードは「興味」です
3.試験のための英語にならないように
4.目的があるからこそおもしろい!
5.まとめ
1.小学生の身近にはすでに英語がある?!
インターネットやスマートフォーンの普及によって、小学生からゲームやYoutube、SNSなどを通じて身近でも英語に触れる機会が増えてきています。
ネットはWorld Wide Web(世界に広く貼りめぐらされたクモの巣)という名前の通り、気軽にスカイプやYoutube、SNSなどを活用して海外の人たちともコミュニケーションが取れる手段です。
「英語学習」というと、どうしても堅苦しく考えてしまいがちですが、身近にあるネットをみると、英語が頻繁に登場しますし、TVから入る英語も多くなってきていますね。
つまり、現代では子供たちも英語を使う機会がどんどんと増えてきた、ということです。
また、最近では高校や大学で、必須単位として海外研修を義務付ける学校も出てきました。
もはや、中学校からABCを始めたのでは遅い!という点ではだれもが一致した見解であると言っても良いでしょう。小学生のうちから、世界と触れる機会は、今後さらに増えていくはずです。
2.小学生が英語を学ぶときのキーワードは「興味」です
小学生が、英語に触れる機会があるとすれば、たとえば、趣味を通じて知り合った仲間たちとの交流をする上で、海外の人たちとの話をしたり情報交換をする、といったことも現実にそれほど有り得ない話ではなくなってきています。
オンラインゲームや、メジャーリーグベースボール、その他、日本のアニメを英語で語るサイトなどもたくさんあります。
子供たちに、いくら英単語を覚えろ!と言ってもなかなか自ら覚えるのは難しいかもしれませんが、たとえば「ゲームの対戦相手が何か言ってきてる!」となれば、だれでも何て言っているのかを知りたいと思うはず。
子供は、自分の興味があることがあれば、調べたり学習する時間を取るのは大人よりもたやすいですよね。その興味を持たせるきっかけを与えるのが、わたしたち大人の仕事かもしれません。
とにかく小学生が楽しく興味を持てる内容で、英語に触れるきっかけを与えることが重要なのではないかな、と感じます。
3.試験のための英語にならないように
小学校5・6年生の児童を対象にした文部科学省の調査によると「英語が好き、どちらかというと好き」での結果は70.9%でした。
ですが、中学生になると「読み書き」「定期テスト」が加わるためなのか、がくんと嫌いになってしまう子供が増えて来てしまうことがわかっています。
英語についてのアンケート調査 → https://goo.gl/7PZwr3
英語を「話す、聞く」授業では楽しかったのが、「読む、書く」授業が加わることになると、児童たちは、難しさを感じてしまい、さらに英語が「試験のための授業」となってしまうことも、中学生に入った途端に英語がいやになってしまう要因の一つでしょう。
また、英語を学ぶことへの抵抗の1つとして文法の活用や単語を覚えなければならなくなります。
それらも心理的な嫌悪感が発生してきてしまうことに繋がっているのです。
ではどのようにして、英語を学ぶためにモチベーションを持続して学習に取り組むことができるのでしょうか。
4.目的があるからこそおもしろい!
英語を「試験だけのために勉強しなければならない!」と感じてしまうと、確かに英語は面白くないものになるかもしれません。
英文法の問題を解いていくだけでは、眠くなってしまうかもしれません。
英語を学習するためには、まずは英語や海外に対する興味、そして小学校高学年生以上であれば、英語を学ぶ目的を持つと学習意欲が格段に高まってくるはずです。
「英語を使って~~しよう!」と思うことで、どんどん学んでいこう、という気持ちも働いてきます。
もちろん、学校で英語や、英会話の授業を増やしていく取り組みは必要でしょう。
ですが、それ以上に重要なのは、英語は試験のためだけに必要なのではない、という実感を子供たちに持たせることではないでしょうか。
生徒一人一人が英語を楽しんで学べるためにも、モチベーションを高めるための目的作りは、いずれ必要となってくるはずです。
5.まとめ
インターネットの普及に伴って、子どもたちにとっても英語は身近になりました。
小学校の英語教科化により、小学生が「試験のための英語」を勉強して、英語嫌いになることがないように、まずは小学生に英語に対する興味を持ってもらえる取組みが必要です。
その上で、子どもたちには英語を学ぶ目的意識を授けたり、英会話を実際に使う機会を与えてあげることが重要ではないかと思います。
次回は、海外での英語教育・外国語教育について、お話をしたいと思っています。
どうぞお楽しみに!
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投稿日: Nov 15, 2017 | 閲覧数: 404 | カテゴリー:
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日本でも、昨今、子どもをバイリンガルに育てるためにいろいろな教育法やスクールがあります。
では、海外では、どのようにバイリンガル教育を行っているのでしょうか?
英語圏と非英語圏によっても違いはあるものなのか・・・。
ここでは、海外に在住している日本人家族が体験した、海外の学校事情および子育て事情をご紹介します。
目次;
1.どんな言語であっても重視すべき4つの技能のこと
2.アメリカでの読み書き指導はどんな感じ?
3.英語を早い時期に教えると日本語がおろそかになる?
4.まとめ
1.どんな言語であっても重視すべき4つの技能のこと
ここではまず、英語という言語に絞ってみましょう。
ネイティブのアメリカ人の子供は英語はペラペラに話せるかもしれませんが、教科書やノートを使用しての「読む・書く」という動作においては個人差があります。
ネイティブのアメリカ人家庭では、「話す・聞く」は日常行われる行為ですが、「読む・書く」は普段の生活で意識的に行わないとしなくても済んでしまう能力とも言えます。学力の差も、この「読む・書く」で付くとも言えるでしょう。
これらの4つの能力を上げることは、言語を取得することにおいて、英語だけに限らず日本語も含めどんな言語でも外すことのできない重要な能力です。
つまり、バイリンガルである前に、どんな言語を学ぶ際にもこの4つの言語能力、「読む」「書く」「話す」「聞く」はおろそかにするべきではない、ということに繋がっていきます。
4技能を重視する動きは、日本の英語教育でも盛んになってきていて、おなじみ「英検」でもスピーキングテストが、英検4級や英検5級といった入門級にも新たに導入されました。
→ 詳しくは「英検4級と5級・スピーキングテストって何?」の記事もご覧ください!
2.アメリカでの読み書き指導はどんな感じ?
アメリカのデラウェア州にある公立のオデッセイチャータースクールでは、授業中でもいくつかのクラスの廊下に机が2つ並べてあり、ボランティアのお母さんと生徒一人が一緒に勉強しています。
生徒が授業についていけないため、ボランティアの方が生徒に一対一で、読んだり書いたりするのを手伝っているのです。読み書きで学力の差がついてしまわないように、サポートをしているのですね。
また、アメリカでも「読み聞かせ」を重視しています。読み聞かせを通じて語彙が増えて想像力が高まり、結果的に言語能力が上がる。すなわち、読み聞かせを通して言語を学ぼう、という考えなのです。
アメリカのデラウェア州にあるクリスチャーナ病院では子供が生まれた時に一冊の絵本をメモとともに手渡されます。
そのメモには、「毎日絵本を生まれたばかりの赤ちゃんに読んであげましょう」と書かれてあります。
手渡されたお母さんにとっては、未だオムツも替えたこともない赤ちゃんに、早速絵本を読んであげましょう、と病院から勧められるわけですね。
3.英語を早い時期に教えると日本語がおろそかになる?
日本語もままならないのに、英語を幼児や子供に教えて混乱しないのかしら?もしくは、母語の発達に悪影響を与えないのかしら、という心配を持たれる方もいます。
では、日本以外の非英語圏でのバイリンガル教育はどうなっているのでしょうか。香港での例を見てみましょう。
香港にあるイギリス系ノードアングリア・インターナショナルスクール(小学校)では、通常の授業は英語ですが、5歳児さんから、すでに第2外国語 北京語(=中国語)があって、9歳からは北京語週5回か、北京語週3回とスペイン語週2回のどちらかを選択することができるようになり、毎日複数の言語を学びます。
香港人の家庭では、普段は広東語を話すのですが、子どもが小さいうちから家庭教師をつけて北京語を学んでいるというケースも多く、テレビでは広東語でニュースキャスターが話していても北京語での字幕が付いていたり、駅の構内でも、広東語・北京語・英語と3ヶ国語で放送されます。
もはや、目指すのはバイリンガルではなく、トライリンガルというのが香港の教育事情です。
香港の子供達は、このようなトライリンガルの環境において、混乱をしているのでしょうか?もしくは、母国語がおろそかになってしまっているのでしょうか?
1997年に中国に返還される前までの香港は、イギリスの統括下にあったため、学校では英語が教えられていました。
そのときに生徒だった子供達は今、社会人として、2ヶ国語もしくは3カ国語を使ってビジネスで活用しています。
このように、外国語が必須とされる社会では、もはや母語への影響云々といった反対意見は聞かれません。
ですが、彼らがバイリンガルもしくはトライリンガルになれたのは、やはりこういった英語や北京語を小さなころから習い、使用する機会があったからでしょう。
香港人にはバイリンガル・トライリンガルが多いですが、決して「自然と」「いつのまに」話せるようになったわけではなく、それなりの努力と時間と根気が必要なのですね。
4.まとめ
バイリンガル教育について言えることは、言語を学ぶことは1年や2年で完了するものではなく、長期間に渡って学び続けるものだということです。
「読む」「書く」の能力は一人でも学べないことはありませんが、たとえば週に1時間程度、英語学校に通うだけでは不十分です。もっとアカデミックに、英語で本を読んだり、書いたりする必要があるでしょう。
また、「話す」「聞く」の能力においては、対人関係のコミュニケーションに深くかかわってくる必要があるため、学んだら、それを使用する、という環境づくりが重要になってきます。
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投稿日: Nov 09, 2017 | 閲覧数: 688 | カテゴリー:
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2016年度より今までは英検3級以上だけに導入されていたスピーキングテストが4級・5級にも設置されました。
この記事では、英検の入門レベルである英検5級と英検4級へのスピーキングテストの導入について、その背景とスピーキングテストの特徴、そして、導入に伴う大手英会話スクールの対応についてご紹介します。
目次;
1.どうしてスピーキングテストは導入されたの?
2.4級・5級スピーキングテストの特長
3.大手英会話スクールの対応
4.まとめ
1.どうしてスピーキングテストは導入されたの?
公益財団法人 日本英語検定協会(以下:英検協会)は、2016年度の第1回英語検定より、英検4級・5級でのスピーキングテストの導入を開始しました。
ご存じの通り、日本の英語教育は近年「英語は4技能」というキャッチフレーズを掲げています。
主に受信系のリーディング(読む)とリスニング(聞く)だけでなく、発信系であるスピーキング(話す)とライティング(書く)が必要だ、という考えです。
これに合わせて、英検協会でもスピーキング力についての検定が不可欠であると考えたようです。
英検協会のホームページには、
「今回の4級・5級へのスピーキングテストの導入も、中高の英語教育や大学入試での4技能化と、小学校での外国語(英語)活動を一致させ、連続性を持たせようというねらいがあります。」
とあります。
→ http://www.eiken.or.jp/eiken/exam/4s5s/merit.html
上記にあるように、2020年度からは大学入試試験の一つであるセンター試験が廃止されて、外国語(英語)の科目では4技能を測る試験が導入される予定だって、ご存知でしたか。
スピーキングテストは、この時流に乗って、必然に迫られて2016年に導入が始まった形ですが、導入したてということもあり、まだ色々な課題も抱えているのです。
2.4級・5級スピーキングテストの特長
4級・5級のスピーキングテストは他の級のスピーキングテストとは少し違います。
大きな特長が2つあります。1つは「いつでも、どこからでも受験できる」こと、もう1つは「英検の合否には関わらない(合否が別に出る)」ことです。
3級以上のスピーキングテストは実際に試験会場に行って面接委員と話す対面形式です。
それが、4級・5級では、コンピュータ端末を利用した録音形式というちょっと「え!そうなの!?なんで?」と言いたくなってしまうような方法を採用しています。
録音は、自宅やインターネットが使える環境下で好きな時間に行って、録音データを送信することになっています。「いつでも、どこでも」というのはそういう意味合いです。
また、4級・5級のスピーキングテストは、リーディングとリスニングの一次試験の合否とは関係なく受験できるようになっていて、合格者には「4級(5級)スピーキングテスト合格」という資格が認定されます。さらに、合否に加えて、英検CSEスコアを使って自分のスピークングテストのスコアを確認することができます。
一次試験とは別で合否を出しますので、英検4級と5級については、スピーキングテストが不合格だったからといって一次試験の合格が取り消されることはありません。
そういった意味では、お子様が実力試しのつもりで受験するには良いかもしれません。
ただし「どうせなら英検受験会場でいっぺんに受験出来てもいいのに・・・」という感想を持つ方もいらっしゃいますよね。
また「そもそもどうして合否は別にするの?」という疑問も当然わいてきます。
ここからは、私の推測にすぎないのですが、計測をする人材の確保や会場の確保、あるいは判断基準の統一化が困難であることなどから、苦肉の策で「録音形式でいこう!」となったのではないかなー、と思っています。
いえ、録音形式そのものに批判があるわけではないのです。ただ、現状のママ世代でネットを利用して子供に録音させた音声を送信する、という作業をササっと出来ない人もいるんじゃないかな、と。
また、自宅等での録音ということで、受験者本人の声かどうかということは分からないため「合否は別」とせざるを得ないのだと思うのですが、「合否に関わらない」→「じゃあ、わざわざ対策・勉強はいいか」という流れにどうしてもなってしまいますよね。
実際に、スピーキングテストの導入を受けて、英検対策を実施している塾や英語教室ではどのような対応をしているのでしょうか。
3.大手英会話スクールの対応
4級・5級のスピーキングテストは一次試験の合否に影響がない為なのか、スピーキングテスト用の対策クラスを開講している大手スクールは2017年10月現在では探し出すことは出来ませんでした。
ECCキッズの英検対策コースでは、5級から準2級までの英検対策コースがありますが、スピーキングの練習は面接試験のある3級以上からしかありません。
イーオンキッズでも同様に、英検対策コースはあるものの、4級・5級スピーキングテスト用の対策クラスはありません。
両スクールとも小学生用の英会話クラスを開講しているので、日頃のレッスンで英会話力をつけていくスタイルを取っています。
4.まとめ
日本の英語教育では、4技能(読む、聞く、話す、書く)が使える英語力を得るために必要だ、としてこれを重視し始めました。それに応じて、2016年から英検4級・5級でもスピーキングテストが導入されました。
ただし、現段階では一次試験と合わせて総合的に合否を決めてはいないため、「実力試し」に近い形の試験になっています。
今後、スピーキングの測定についてどのような方法が採用されていくのかについて、注目をしていく必要があります。
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投稿日: Nov 01, 2017 | 閲覧数: 548 | カテゴリー:
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日本と同様に、外国語として英語に取り組んでいるアジアの英語教育の現状を知っておきましょう!
目次;
1.はじめに
2.カンボジアの教育・歴史的背景について
3.カンボジアにおける英語教育とその成果
4.カンボジアのインターナショナルスクール
5.まとめ
1.はじめに
日本では小中学校の義務教育課程の中で必ず英語教育が行われますが、英語を母語としていない外国の英語教育の事情は、意外と知られていません。
今回は、筆者の滞在地、東南アジアの国・カンボジアでの英語&英会話教育事情についてお伝えしたいと思います。
2.カンボジアの教育・歴史的背景について
まずカンボジアの英語教育を語る前に、触れなければならないカンボジアの歴史があります。
それは、1970年代の内戦によって、カンボジアの教育はほとんど破壊された、ということです。
当時政権を握っていたポル・ポトは、極端な共産主義を志向し、都市住民を地方に強制移住させ、農業に従事させるという政策を展開し、知識人をすべて敵とみなし、教育の基盤を担う先生たちを亡き者にしてしまいました。
それから40年ほど経過した現在、カンボジアの教育はまだまだ日本のように整ってはいません。
ですが、世界遺産アンコールワットを抱えるこの国の魅力は、たちまち世界中の観光客を惹きつけ、観光業を中心に急激な経済発展をとげ、町には非常に活気があります。
そして、観光業の発展に伴って、英語教育の重要性が浸透していくようになっていったのです。
カンボジアも日本と同様、小中学校が義務教育となっています。
都市部では教育の重要性を理解する親が増えてきており、将来を見据えてしっかり学校に通わせる傾向にありますが、地方農村部においてはまだまだ子どもを労働力とみる傾向が残っています。
就学年齢を超えてから、再び学校に入り直し教育を受けるといったケースが多いため就学率のデータはあいまいな部分が多く、不確実です。なので、ここではそれについての記述は避け、実際に英語教育を受けている人たちについて記述していきます。
公教育の場で、外国語教育が行われるのは中学生年代になってからです。
フランスの植民地だった影響もありフランス語か英語を選択する仕組みですが、やはり現在は英語を学ぶ場合がほとんどのようです。
観光業に従事する人にとっては特に重要なコミュニケーションツールとなる英語です。
では、その英語教育の成果はどうなっているのでしょうか。
3.カンボジアにおける英語教育とその成果
結論から言いますと、中学生年代で英語教育を受けて、ネイティブの外国人観光客と対等に英語を使用できるレベルのカンボジア人の割合は、肌感覚から言って決して高くはありません。
ですが、日常の一場面においての会話能力は、日本でしっかり英語教育を受けた子どもよりも圧倒的に高いです。
特に、観光客を相手にしたお土産売りや商売をやっている子どもたちを見ていると、そのことを強く感じます。
学校で習った英語を駆使し、値段を伝える際の数字はもちろんのこと、高い、安いと言った買い物の場面で使用される語彙、何かをお願いするときや意思を伝える言葉、道案内でよく使うフレーズなど、生活に必要な英語力=会話力は驚嘆に値します。
日本人ならしり込みするような場面でも、彼らには生活がかかっている場合もあり、それにより学校で習った英語がさらに研ぎ澄まされていきます。
実践による習得が、学校での英語教育を支えに機能しており、そういった意味では英語教育の成果は日本より高いと言えるでしょう。
使用することにより能力が上がることは当たり前と言えばそうですが、改めて子どもの潜在能力の高さを感じます。
そしてそういった体験を子どものころに多くした大人は、英語学習を続ける傾向にあり、仕事をしながら英語教室、英会話教室に通う人も大勢います。
いずれにしても、英語が将来の自分へのリターンを大きくしてくれるということを理解しているのです。
4.カンボジアのインターナショナルスクール
もうひとつ英語教育について触れなければいけないのが、インターナショナルスクールの存在です。
国の政治が安定した2000年代以降は、欧米をはじめとする諸外国から外国人の居留するようになり、ビジネスやNGO活動といった形で、カンボジア国内に多くの外国人が入ってきました。
家族とともにカンボジアで生活する場合に、子どもの教育について苦労することが多分にありましたが、インターナショナルスクールが設立されるようになり、そのような問題は徐々に解決されてきています。
インターナショナルスクールには、富裕層のカンボジア人の子どもも通うことがありますが、基本的には英語で授業が行われます。
日本人子女も通っていますが、当然ながら学校生活での言語が英語になりますから、ほぼネイティブレベルの英語能力を有します。そして家庭では日本語、もしくはカンボジア語といったように複数言語を操っています。
英語が一番強くなり、母語がやや弱くはなりますがコミュニケーションにおいて問題はないレベルですので、英語教育だけを行なった場合よりも、さらに高い成果が得られていると考えられます。
5.まとめ
英語能力を上げるには、現地で生活するのが一番とはよく言われますが、教育環境が整っているとは言い難い国の事例を見ると、その説得力がより増したのではないでしょうか。
英語に触れる機会が増えれば増えるほど能力が上がる、ということは国内にいながらにして、その能力を上げるにはそのような環境に触れ続ける必要があるということです。
そのためには、将来を見越した自己投資が必要となりますが、継続することで大きなリターンがあると言えるでしょう。
経済発展が日本よりは遅れているカンボジアの人たちがそのことをよく理解している、というのは大いに示唆に富んでいます。
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投稿日: Oct 25, 2017 | 閲覧数: 479 | カテゴリー:
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